地方移住について

東京の目黒区から神奈川県の葉山町に移住して丸三年が経ちました。
一時よりは落ち着きましたが、いつか地方移住を…と考えている人が周りに多く、
「移住生活、ぶっちゃけどう?」と聞かれることがよくあります。

この三年を振り返る意味でも、家族にインタビューしながら
地方移住のリアルなところを書き連ねてみたいと思います。

都心へのアクセスも良く、
都内からの移住者も多い葉山を「地方移住」と一括りにしていいのかわからないけれど、
住環境も人間関係も一新する家族四人での大移動はわりと大きな我が家のイベントでした。

移住して良かったこと
①家が広い
なんといっても「住環境」は充実しています。
今住んでいる家は延べ床210平米強、部屋数は前の家の3倍の賃貸戸建てで駐車場付。
目黒区で同等の戸建てに住んだら家賃60万オーバーだろう。
もっとも現在の建築基準でこのサイズの家は建たないそうですが、
そんな広さで以前の家賃+2万で住めちゃっています。
地方に行くのに家賃上げてどうすんねんと友人には言われましたが、
わたしたち夫婦がそれぞれ借りていた倉庫や
コロナ禍前に借りようとしていた店舗と事務所を考えたら支出はぐっと抑えられています。
葉山は電車が通っておらず、最寄りの駅となると「逗子駅」になります。
バスは割と通っているので、車がなくても都内への往復は問題ないですが、
あったほうが休日の行動範囲が広がるのは間違いない。
我が家は夫しか運転しません。
わたしも免許は持っているけれど葉山の狭い道を運転する勇気が持てず…
子どもたちの送迎は夫の役割になっています(ありがたや)
でも日々苦情が来るので、そろそろ練習しなきゃとは思っています。

②最高の子育て環境
海も山もある葉山
これは何にも代えがたい。
仕事最優先でガツガツしている人があんまりいない。
労働時間も長時間働いている人はそんなにいない。
仕事よりも私生活を充実させたいという人、働きすぎの環境に疑問を持っている人は、
一度地方移住を経験してみる価値はあると思います。
わたしも四六時中仕事のことを考えているし、それが幸い好きなことなので苦にならないのですが、
年々東京のペースに疲れてきていたところだったので、ちょうどいい感じで働けているのではないかと思う。

③本質的な話をする人が多い
葉山は独特な土地だと常々思う。
表面的な「飲みに行きましょう!」や「一緒に仕事しましょう!」がなく、
言うより先にもう始まっちゃってる、という感じ。
一度人間関係を強制リセットする「移住」では波長の合う合わないの感度を上げて人間関係を構築することができるので、
特に波長の合う人と良い関係を築くことを波紋のように良い関係が広がっていく。
そんなイメージを持って人との繋がりを作っています。

移住で生じた課題
①友人・知人と気軽に会えなくなった
コロナ禍で頻繁に東京に行けなくなると、完全に地域の中での人付き合いのみになり、極端に人間関係が狭まった。
ある意味、それが本当の意味での「リアルな地方移住」の環境と言えるのかもしれない。
葉山にきてから知り合いになった人たちは、基本的に子ども関係、仕事関係の人がほとんどで、
プライベートな友人はあまりいない。
夫がいるので寂しいとは思わないが、外から受ける刺激は少ないので、
今後の自分の仕事などには影響があるかもしれないと思っている。

②選択肢が少ない
これは東京以外の地域はどこでもそうだと思う。
職業、住居、飲食店、医療、人付き合い、東京では選べたものが、地方では選べないことが多い。
この選択肢の少なさが「楽だ」と思うこともあるが、
やはり色々なものを調べて比較検討して選択するというライフスタイルが身についてしまっている自分にとっては
ストレスになることも。

③小さなコミュニティの息苦しさ
東京にいた頃は、意見が合わない人がいたら離れれば良かった。
合わない場所に無理に居続ける必要はないから、言いたいことも言いやすかったと思う。
しかし、地方ではそういうコミュニケーションの取り方ができない。
言いたいことがある場合に、遠回しに圧力をかけるというようなやり方をする人も少なくないという。
「言いたいことがあれば本人に直接言えばいいのに」というのは、都会の人の理論なのだろう。
地方に住む人たちは、嫌になったからといってその場所から逃れることができない。
これは私の実家のあたりでもそうなので、止むを得ないことなのだろうとは思う。

結論
地方移住には大きくわけて、
・都会(東京)の仕事をリモートでする
・その地方で就業する

この2つのパターンがある。

わたしはこの両方に当てはまるのだが、東京の仕事をリモートでやるのは経済的なことを考えると一見良さそうに見えるけれども、
ずっと地方に居続けて東京の仕事だけをやり続けるのはなかなか厳しいように思う。
やはり人的ネットワークや文化的な刺激といった、東京でしか得られないものが得られなくなることは、
後々じわじわと仕事のリソースを削っていくからだ。
わたし自身の肌感覚でいえば、おそらく3年くらいは東京にいた頃の「蓄財」でどうにかなる。
それを超えると東京の仕事「だけ」をやるのは、先細りしていく可能性が大きいと思う。
一方で地方で就業し、その地方で人的ネットワークを作り、地域に根ざした仕事をするパターンの場合は、
東京での仕事のやり方や人脈といったものをいったんリセットし、ゼロからやり直すくらいの気持ちが必要になる。
詰まるところ地方移住が楽しくなるかならないかは、その土地でどんな人と出会うかに尽きると思う。
幸せなことに、子どもたちを介して出会う人たちがとても穏やかでとても良い方ばかりで、
わたしたち家族にとって葉山へ移ったことはいまのところ想像していた以上に人生を豊かにしてくれた。
いつまでここにいるのかは未定だが、この土地に還元できる何かをこれから模索していく時期に入るのかなぁと思う。

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